「くしゃみをして骨が折れた」という話を聞いたことはありませんか?
骨粗しょう症になると、ほんのわずかな衝撃でも骨折することがあります。
「腰の曲がったおばあちゃんの話でしょ」と思われるかもしれませんが、女性は閉経が近づくと、骨からカルシウムが溶けだしやすくなり、骨密度が急激に減っていくのです。
骨粗しょう症を防いで、いつまでも自分の足で歩けるように、50代の今から骨のケアを始めましょう。
骨の危機は50代から
25歳はお肌の曲がり角といわれますが、骨の曲がり角は50歳。
どちらも鍵を握っているのは女性ホルモンのエストロゲンです。
エストロゲンは妊娠・出産に欠かせないホルモンですが、お肌の新陳代謝を促進したり、骨からカルシウムが溶けだすのを防ぐ働きもあります。エストロゲンの分泌は思春期から急激に増え、20代前半でピークに。そして、更年期と呼ばれる40~50代頃から一気に減少し、閉経後はほとんど分泌されなくなります。
日本人女性の平均閉経年齢は約50歳。個人差はありますが、このあたりから骨の危機が始まると考えられます。
骨粗しょう症はいつの間にか進行
お肌は年齢が表れやすいので、念入りにケアしている人も多いでしょう。
でも、骨のケアはどうですか?
骨密度が20~40代平均値の70%以下になると、骨粗しょう症と診断されますが、検診や治療を受けている人は少ないのが現状です。
骨粗しょう症は、初めのうちは自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行していることもしばしば。
そのため「つまずいて手をついただけで骨折した」「腰が痛くて病院に行くと圧迫骨折していた」ということが、ある日突然起こるのです。
骨粗しょう症の危険度をチェック
骨粗しょう症の推定患者数は1000万人を超え、50歳以上の女性では約4人に1人ともいわれます。男性でも50代頃から骨量が減少します。また、糖尿病や高血圧などがあると骨が弱くなりやすいため注意が必要です。
まずは、チェックリストで確認してみましょう。
- [女性]閉経を迎えた[男性]70歳以上である
- 体格はどちらかといえば細身だ
- 牛乳、乳製品をあまり摂らない
- 青魚、豆腐をあまり摂らない
- 身体を動かすことが少ない
- 天気のよい日でも、あまり外に出ない
- お酒はよく飲むほうだ
- たばこをよく吸う
- 最近背が縮んだ気がする
- 最近、背中が丸くなり、腰が曲がってきた気がする
※「10.」に該当する場合、チェックの数に関わらずお医者さんに相談しましょう
太田博明先生(川崎医科大学産婦人科学2 特任教授/川崎医科大学総合医療センター産婦人科特任部長)考案
1つでも当てはまる人は、骨が弱くなっている可能性があります。
自治体の骨粗しょう症検診、病院などで骨密度の測定をしましょう。
骨は動かすことで強くなる
骨や筋肉、関節、神経など、身体を動かすための器官の総称である運動器は連携して働きます。そのため、どこかひとつでも弱ってしまうと、身体がうまく動きません。
裏を返すと、筋肉を動かすことが骨も一緒に鍛えることにつながる、ということ。骨をつくる細胞は、走ったり歩いたりして骨に刺激が伝わることで活性化するのです。
50歳を過ぎて、普段からあまり運動をしていない人は、筋肉だけでなく骨量もどんどん減ってしまいます。カルシウムをたくさん摂るだけでは、加齢による骨量の減少は防げません。
運動をして骨に負荷をかけると同時に、カルシウムの吸収や骨への定着を高める必要があります。
ビタミンDはカルシウムの吸収に欠かせない栄養素ですが、紫外線を浴びれば体内でも合成されます。日焼けの心配もあるので、晴れた夏の日なら15分程度で良いでしょう。
きのこ類や鮭など、ビタミンDが豊富な食材を積極的に食べることも大切です。
この記事のまとめ
骨粗しょう症は、ロコモティブシンドローム(ロコモ)を招く代表的な病気です。ロコモは運動器に障害が起きて、動きにくい状態のこと。
寝たきりになるリスクが高いため、50代からは骨だけでなく、運動器の健康を保つことを心がけましょう。
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医療法人幸鷺会 森整形外科リハビリクリニック 院長 。公益社団法人日本整形外科学会 整形外科専門医 日本スポーツ協会公認スポーツドクター