和食といえば何を思い浮かべますか?
ごはんに味噌汁、焼き魚、肉じゃが、卵焼きに納豆、おひたし・・・。
母親の作ってくれた思い出の味、日本人ならそんなイメージがあるでしょう。
洋食に比べ比較的低カロリーで栄養バランスが良いと、今や和食は世界的なブームです。
日本人の長寿や肥満防止の一因になっているともいわれる和食ですが、その和食の栄養バランスに意外な落とし穴があることをご存じですか?
健康増進食といわれる和食は、日本の風土と伝統がつくり出した「文化」
和食にはごはんと汁物に加え、主菜1品、副菜2品という「一汁三菜」という基本的な組み合わせがあります。
これは、主食であるごはんをおいしく食べるための昔からの様式で、その料理方法にはその土地の四季折々の旬の食材を、煮る・蒸す・ゆでる・和えるなど様々な手段を使っておいしく食べる、長年の生活の知恵が詰まっています。
正月7日に七草がゆ、3月3日に邪気払いのためのヨモギ、5月5日に健康を願って柏餅やちまきを食べるなど、行事や節句を通して身体に良いものを取り入れてきた和食の文化。
家族や地域の人たちをつなぐ役割もあり、「おもてなし」の心や自然を尊ぶ日本人の気質とともに、単なる食事を超えて、今やユネスコ無形文化遺産に登録されています。
理想的な栄養バランスへと独自の進化を遂げた和食
和食はもともと少ない菜でたくさんのごはんを食べ、ごはんの量でカロリーを調節するというのが基本的な食べ方でした。
しかし、飢餓の経験や栄養学の研究が進むにつれて、ごはんに偏った食事を見直し、米を基本としながらも乳・乳製品、肉・魚類、野菜類などを適度に加えたバランスのよい食事へと変化していきます。
これまでにはなかった炒める・揚げるなどの調理方法も加わり、献立の幅は一気に広がっていきました。
新しい調理法や肉じゃがやとんかつなどの肉料理を取り入れることができたのは、汁と菜でごはんを食べる「一汁三菜」の基本スタイルがあったためという説もあります。
1980年頃の日本は栄養バランスの指標であるPFCバランスが理想的な値であったといわれています。
「和食は健康長寿食」に潜む落とし穴
しかし、そんな和食にも欠点がないわけではありません。
1つは和食に欠かせない調味料である味噌や醤油、それを使った味噌汁や佃煮、塩鮭など、ごはんに合うおかずは、食塩の多いこと。
もう1つは、カルシウムが摂りにくい点です。
日本の水はミネラルの少ない軟水であることも関係しているようです。
学校給食に牛乳が採用されているのは、そのためです。
慢性的なカルシウム不足は骨粗しょう症や動脈硬化のリスクを高めるともいわれているため、意識して摂る必要があります。カルシウムだけではなく、カルシウムの吸収促進や骨の代謝に関わるビタミンDを補うため、きのこ類や魚を食材に使ったり、日光に当たることも大切です。
和食+減塩+カルシウムでベストな栄養を摂りましょう。
カルシウムが多く含まれるのは、小松菜や水菜などの野菜類や昆布、豆腐などの大豆製品です。
これらを味噌汁の具材やおかずに取り入れましょう。
また、最近では味噌汁に牛乳を加える料理方法も、カルシウムが摂れるだけでなく牛乳によるコクやうまみで味噌の量も減らすことができ、減塩にもつながると話題です。
特に牛乳・チーズ・ヨーグルトなど乳製品は調理せずそのまま食べられ、手軽なカルシウム補給にも最適です。
しかもカルシウム吸収率が、小魚が33%、野菜が19%であるのに比べて牛乳は40%と高いため、効率よくカルシウムを摂取することができます。
出典:一般社団法人|Jミルク
https://www.nyukyou.jp/dairy/index.php?rm=4&qa_id=470
他にもたんぱく質やミネラル、ビタミンも含まれているので、和食でも積極的に取り入れていきたいものです。
味噌や醤油などの伝統的な調味料と牛乳との組み合わせは意外によく合い、味噌汁以外の他のレシピもあります。
日本人が和食中心の食生活をしていたのも今や昔、現在では米の消費量もピーク時の半分といわれ、「中食」といわれる弁当や総菜などを買ってきて食事を済ますなど、家庭で調理する機会も減っています。
出来合いのお惣菜は、塩分やカロリーが過剰になりがちともいわれています。
コロナ禍で自宅にいる時間が増えている今こそ、乳製品を取り入れた和食を作るなどして、普段の栄養バランスを見直してみてはいかがでしょうか?